2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭の日露接近における「皇室外交」と「国民外交」:国際関係理論を展望して
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08F08312
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 康浩 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BARYSHEV E.A. 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | 日露関係 / 皇室外交 / 国民外交 / 国際関係理論 / 同盟 / ネオクラシカル・リアリズム / 文明の均衡 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成21年度、研究分担者は、計4本の学術論文(内一本は単行本に所収)を発表し、また2010年2月22日には、京都大学人文科学研究所の研究会「第一次世界大戦の総合的研究に向けて」の招聘で、「第一次世界大戦と日露関係-「例外的な友好」の真相」と題した学術報告を行った。 また分担者は、特別研究員奨励費を利用して東京とモスクワでの研究調査を実施し、合わせて1ヶ月ほどかけて資料収集に取り組んだ。2009年6月には国会図書館(憲政資料室を含む)・宮内庁書陵部・防衛研究所資料室等において、20世紀初頭の日露関係に関わる資料、特に皇族訪問や経済界の動き(「国民外交」)に関する資料を収集した。同年11月末から12月初めにはモスクワ出張を行い、ロシア側の皇族外交に照明を当てたロシア帝国対外政策資料館(AVPRI)、ロシア軍事史資料館の一次史料やロシア国立図書館所蔵(RGB)の貴重な史料を閲読・筆写できた。研究員は、取得した資料に基づいて、第一次世界大戦期の「国民外交」および「皇室外交」が鮮明に現れる日露軍事協力の側面を詳細に再現することを構想している。 他方、研究代表者は、特別研究員による以上の作業をサポートしながら、研究員による日露同盟に関する歴史研究が有する理論的含意と近年の国際関係理論の動向を突き合わせる作業を行い、その結果、研究員の実証分析のアプローチは、国際システム要因を独立変数としながらも、ユニット・レヴェルの媒介変数を重視して従属変数たる対外政策を理論化する「ネオクラシカル・リアリズム」に極めて類似していることが明らかになった。もっとも研究員の独自な視点は、日露の同盟関係が築かれた際の「文明」ファクター(「西洋ではない」連帯感)を重視する点にあり、「勢力均衡」「脅威均衡」といった旧来の同盟形成理論に加えて、ユニット・レヴェルの文明的アイデンティティに着目した「文明の均衡」の視点を理論に組み込む意義が見出された。
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Research Products
(5 results)