2009 Fiscal Year Annual Research Report
都市高齢者の孤独問題と社会的ネットワーク--日中比較研究を目指して
Project/Area Number |
08F08318
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
松本 康 Rikkyo University, 社会学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 明鮮 立教大学, 社会学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 高齢者 / 都市 / 孤独感 / 孤立 / 社会的ネットワーク |
Research Abstract |
本研究は、少子高齢化が急速に進んでいる都市在住の高齢者の孤独問題を、東アジアに共通する課題として捉えたうえで、日・中・韓の比較という観点から、高齢者をとりまく社会的ネットワークと各級政府の高齢者政策および行政・市民の協働との関連で明らかにしようとするものである。 本年度は、一般の高齢者を対象とする社会的ネットワークと孤独感に関する聞き取り調査を実施した。三鷹市井の頭地区から100名の高齢者を抽出し、訪問面接調査を依頼した。その結果、34名が調査に応じ、1時間以上にわたる深層面接を実施した。その結果は以下の通り。(1)客観的にみて孤立しているようにみえても「孤独を楽しむ」高齢者が少数ながらいた。かれらは専門職や管理職の職歴をもつ高学歴者で、ひとりで楽しめる趣味を生き甲斐にしていた。(2)孤独を感じやすい高齢者の条件は、後期高齢者、男性、健康状態が悪い、配偶者がいない、ひとり暮らし、年金がない、近隣に友人がいない、家族親族ネットワークがないなどである。とくに、近隣に友人のいない男性の高齢者が妻を亡くした後、社会的に孤立するケースが典型的であった。 これらの知見を、中国・韓国の都市部の高齢者と比較すると、ひとり暮らしであることと、低所得であることは、孤独と孤立を引き起こしやすい共通の要因となっていた。相違点としては、日本(三鷹市)は地域の人間関係の希薄さが孤立の大きな要因になっているのに対して、韓国(ソウル市)では、貧困による孤独が深刻であり、中国(煙台市)でも年金制度の不平等が所得格差を生み、貧困が孤独をうみがちであった。したがって、政策的には、韓国では、年金の受給率と持ち家取得率を高めること、中国では不平等を生まない年金制度の改革が課題となるのに対し、日本では地域社会の再構築が、高齢者の孤独を減少させるための鍵となる要因であることが示唆された。
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Research Products
(5 results)