Research Abstract |
余接束を用いて代数多様体の幾何構造を調べるという方法は、1970年代以来研究代表者が一貫して追求して来たテーマであるが,分担者Roulleauは独自のアイデアを導入して上記の方法を具体的な素材に適用し,古典的な研究対象に対する新たな研究方法を発展させつつある。 来日以来,同人が主要テーマとして取り組んできたのは,きわめて具体的な問題である。非特異な3次元3次超曲面F上の直線の全体は,Fano曲面Sをパラメータ空間に持ち,対応する直線の普遍族XはSの余接束の射影化と同一視される。自然な射影f:X→Fは次数6の全射であることが古典的に知られていたが,この写像は本県有テーマである余接束の大域切断が定める余接写像に他ならない。Roulleauはfが有限写像でない場合,fによって点に写されるF上の曲線を,斬新なアイデアを導入することによって、完全に分類した。そのアイデアとは,fが曲線Eを一点f(E)に写せば,Eは非特異楕円曲線で,Eに対して位数2のSの自己同型(鏡映)が自然に定まることに着目したことにある。このような鏡映が生成する有限群Gを解析すると,問題の曲線の個数は0,1,3,4,6,10,12,30のいずれかであることが示される。30個の場合,有限群の位数が9720でFがFermat 3次超曲面であることもわかる。RoulleauはさらにFがKleinの3次超曲面である場合に,Fano曲面Sと余接写像f:S→F,G等の構造を詳しく解析した。 以上のきわめて詳細かつ具体的な成果は,より一般的な余接束写像理論と合わせて,3篇の学術論文にまとめて出版した。
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