2009 Fiscal Year Annual Research Report
チベット空気シャワー観測装置による高・超高エネルギー宇宙放射線の研究
Project/Area Number |
08F08329
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧田 正人 The University of Tokyo, 宇宙線研究所, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHEN Ding 東京大学, 宇宙線研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | チベット / 空気シャワー / 10TeV領域 / ガンマ線 / Kneeエネルギー領域 / 一次宇宙線 / ミューオン観測装置 / カニ星雲 |
Research Abstract |
日中共同実験のチベット空気シャワー観測装置は、高度4300メートルの中国チベット高原に789台のシンチレーションカウンターを7.5m間隔の碁盤目状に配置した37000平方メートル空気シャワーアレイであり、TeV領域以上の宇宙線及び宇宙ガンマ線の広視野連続観測を世界最高感度で行っている。チベット空気シャワー観測装置はTeV領域の空気シャワーの到来方向を1度以上の精度で決定できる世界で唯一の装置である。この観測装置により、高エネルギー宇宙ガンマ線点源の探索、ガンマ線バーストの探索、カニ星雲からのガンマ線スペクトルの精密測定、超高エネルギー一次宇宙線の化学組成及びエネルギースペクトルの測定、銀河一次宇宙線の異方性の観測等と通じて、宇宙線の起源・加速機構に関する極めてユニークな研究を行う。チベット実験では10TeV領域の宇宙ガンマ線エネルギースペクトルの精密測定が可能であり、かに星雲からのガンマ線の起源が電子加速による逆コンプトン効果起源か陽子加速による中性パイ中間子起源かの判別が出来る可能性がある。 米国のMILAGRO実験が代表エネルギー6TeVで恒星時宇宙線異方性を観測したところ、LOSS CONEと呼ばれる0.1%程度の凹みの深さが年変化(2000年の0.1%から2007年の0.35%へ増加)しており、太陽活動と相関があるとの論文を発表した。しかし、Tibet ASγ実験(5TeV)やsub-TeV領域の宇宙線異方性を長期観測している松代地下ミューオン観測装置ともに、そのような変化は観測されなかった。 Fermi高輝度天体リストに基づき、Tibet ASγ実験の視野内にある27個の銀河系内天体からのTeV領域ガンマ線放射の探索を行った。27個の候補天体中2σ以上の超過事例を持つ背景雑音天体の数は0.61個と予想されるが、実際には7天体から2σ以上の信号が観測された。偶然このような観測結果となる確率を計算すると3.8x10-6と大変低い確率になるので、この相関は統計的に有意と判定される。相関のあった7天体は全てパルサーであった。
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