2008 Fiscal Year Annual Research Report
中性ポーズ並びにフェルミ原子気体における超流動性の理論的研究
Project/Area Number |
08F08331
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
町田 一成 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HUHTAMAKI J. A. 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ボーズアインシュタイン凝縮 / フェルミ超流動 / スピナーBEC |
Research Abstract |
Huhtamaki氏は2008年秋から私の研究室に参加したので、現時点での成果としての論文発表はないが、研究は順調に進行しているので以下にはその状況を記すことにする。彼とのプロジェクトは1)スピナーBose-Einstein condensation(BEC)の研究と2)フェルミ原子気体のd波対称性をもつ超流動の研究とからなる。両者はボーズ粒子系とフェルミ粒子系と全く異なる統計に属する原子集団であるが、いったん超流動状態になると極めて似た理論構造を有していて共通の数学的な手法で記述することが可能である。一方で、これらの複数の秩序変数で記述される超流動体は前者がスピン空間の縮退から生じているのに対して、後者は対の相対軌道角運動量、即ち実空間での縮退から生じているという相違がある。従って、両者を同時平行的に研究していく十分の意義が存在する。1)の課題のスピナーBECについておこなったことは以下の通りである。まず系の基礎方程式であるGross-Pitaevskii方程式を書き下し、数値計算のためのプログラムを完成させたこと。次に系のパラメーターを適当に選んでcyclic相を安定にした。このcyclic相を回転させて生起する渦を詳細に調べた。その結果、渦の量子化が分数の、即ち1/3-vortexが他の可能な渦状態よりも安定なことを見出した。1/3-vortexはnon-commutativeなnon-Abelian vortexであるので、こうした特異な渦がスピナーBECのcyclic相に安定に存在することを初めて証明したことになる。実験の提案としてF=2にある87Rb原子気体を回転下に置けば、適当な成分比のもとでは1/3-vortexが生成できるというものである。2)の課題についても研究を進めた。Ginzgurg-Landau方程式をd対称の秩序変数の場合について導出した。それをとじ込めポテンシャルが存在する場合について数値計算を交えて解析した。弱結合と強結合の場合について理論を展開した。弱結合では強磁性状態が安定することを見出した。強結合ではcyclic状態を安定にするパラメーターのもとで、系を回転下に置いた。そこで生起する渦が1/3-vortexであることを見出した。この1/3-vortexの低励起構造を空間の様々な場所で計算し、局所状態密度を求めた。その結果、1/3-vortexの安定性の物理的な理由の一端を理解することができた。今後は1)につては系の集団励起構造を調べ、1/3-vortexにまつわる固有の集団モードの発見に努める。2)については1/3-vortexの渦芯回りのフェルミオン励起構造をしらべ、渦芯束縛状態を明らかにする。
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