2009 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系IIの品質管理におけるPsbOタンパク質のダイナミックな役割
Project/Area Number |
08F08414
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 泰 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LUNDIN B.C. 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 光化学系II / 葉緑体 / FtsH / D1タンパク質 / リン酸化 |
Research Abstract |
本研究では、光化学系IIの品質管理機構解析の一部として、光ストレス下での光化学系II全体の挙動解析、特に光化学系IIタンパク質のリン酸化・脱リン酸化と光化学系II複合体二量体の単量体化、D1タンパク質の分解・凝集、アンテナクロロフィルタンパク質CP43の光化学系IIからの遊離、PsbOタンパク質の光化学系IIからの遊離、FtsHプロテアーゼの量的変化と安定性について、Arabidopsisのkinase-欠損mutants(stn7/8)を用いて調べた。 Arabidopsis野生株の葉緑体チラコイド膜に強光(1,000μmol photons m^<-2>s^<-1>)を照射すると、D1タンパク質が分解される。この時、D1タンパク質の脱リン酸化がD1分解に必要であるとの報告があり、これが一般に広く信じられている。しかし、本研究でD1タンパク質が全くリン酸化されていないstn7/8 mutantから得られたチラコイド膜で強光によるD1タンパク質分解を調べたところ、D1タンパク質の分解速度は野生株と比べてほとんど差が無いか、むしろmutantの方がD1分解が遅かった。その原因を調べたところ、D1分解に関わるとされるFtsHプロテアーゼがstn7/8 mutantで不安定であることが分かった。以前にstn7/8 mutantで光ストレス下でのD1分解を調べた結果、野生株と同じ速度でD1分解が起きることからD1の脱リン酸化はD1分解の前提条件にはならないとの結論が下されたことがあるが(Bonardi et al. Nature 437, 1179-1182)、これはstn7/8 mutantでFtsHプロテアーゼがうまく働いていないことによるのかもしれない。なぜ、このmutantでFtsHが不安定になるのかは、よく分からない。FtsH自身がリン酸化タンパク質であるとの報告は無い。FtsHの活性型hexamer構造にリン酸基が関与するとの知見もない。stn7/8 mutantではチラコイドのstackingが少ないとの報告がある。Digitonin分画法でチラコイド膜のstackingの程度を野生株とmutantで比較したところ、大きな差はなかった。しかし、強光照射でチラコイド膜をunstackさせてみると、mutantでは野生株より早くunstackingが起きた。このことは、mutantでチラコイドのstacking構造が不安定で、FtsHの6量体構造が維持されにくい可能性を示している。チラコイドのstackingがどのようにしてFtsHの安定化に関わるかは不明であるが、最近のホウレンソウチラコイドを用いた研究では、FtsHはグラナ部分に集合して6量体を安定化する結果が得られている(Yoshioka et al., unpublished)。
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Research Products
(1 results)