2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08F08419
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木下 一彦 Waseda University, 理工学術院, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HOSSAIN M.D. 早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
|
Keywords | 回転分子モーター / F_1-ATPase / SDS / 界面活性剤 / ATP加水分解 / トルク |
Research Abstract |
昨年度報告したように、界面活性剤SDS(sodium dodecyl sulfate)は、一般にたんぱく質変性剤であるにもかかわらず、0.003%(w/v)という極低濃度で回転分子モーターF_1-ATPaseの活性を向上させる。この効果は主として、MgADP阻害状態に陥ったF_1分子を活性型に引き戻すことによると考えられたため、顕微鏡観察により回転する(活性のある)分子数を定量した。0.29μmのbead duplexを結合させて回転観察したところ、飽和ATP濃度(2mM)では0.003% SDS存在下で回転分子の割合が2.2倍に、低濃度ATP(200nM)では3.5倍に増加した。40nmの金粒子を結合させた回転観察(無負荷回転)では、2mM ATPで1.4倍、20nMで4.7倍であった。ATP加水分解活性に対するSDSの効果も同じ傾向で、低濃度ATP下でのMgADP阻害からの復帰に著しい効果を発揮する。そもそも低ATP濃度では回転観察が困難であるが、SDS添加により容易となる。 一方、回転子γサブユニットのカルボキシル(C-)末端を固定子βサブユニットに遺伝子的につないでしまった変異体を用いて、回転子のアミノ(N-)末端の削除が回転に及ぼす効果を調べた。N-末はC-末とともにαヘリクスのコイルドコイルを形成して回転軸となるが、その半身を端から削いでいく実験である。回転子を削ると固定子から抜けやすくなる可能性があるので、固定子との間をポリペプチドリンカーでつないだのである。リンカーの存在は回転特性にほとんど影響を与えないことが分かった(ペプチドは一重結合を含むため自由回転可能)。また、N-末のαヘリクスを完全に削除してしまっても(完全に半身に削いでも)、モーターはかなりの高速で回転し、しかも有限のトルクを発生できる(粘性抵抗に抗してビーズを回せる)ことが分かった。
|
Research Products
(2 results)