2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08F08604
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
笠井 康子 National Institute of Information and Communications Technology, 電磁波計測研究センター環境情報センシング・ネットワークグループ, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DUPUY Eric 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究センター環境情報センシング・ネットワークグループ, 外国人特別研究員
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Keywords | Water Vapour / Dimer / Atmosphere / Infrared / ACE-FTS / Spectroscopy |
Research Abstract |
水蒸気は地球大気において最も重要な気体の一つである。水蒸気はその分子科学的性質から二量体三量体などの錯体を作成しやすいことが知られている。水蒸気錯体は地表面でメタンやNNOなどに相当する量があると予測されながら、実験的・観測的に検出することは困難であった。これまで多くの研究者が検出に挑戦して来たが、これまで成功した例はない。本研究では、「世界で始めての水蒸気結合錯体の大気中における検出」に挑戦するものである。 これを解決する手法は大きく分けて2種類ある。一つは遠赤外領域で受信感度も遷移強度も弱いが水蒸気錯体を単体として取り出せる方法、もう一つは水蒸気モノマーの遷移が多くあるが、錯体の遷移も強い領域において、窓領域や振動励起状態を検出する手法である。今年度はACE/FTSスペクトル解析により、後者を実施した。ACE-FTSの中間赤外のスペクトル周波数範囲は750-4400cm-1であり、その周波数分解能は0.02cm-1である。現在の理論的な解析や実験室分光では、H2Oの二量体錯体の遷移は線幅40cm-1程度であり、遷移周波数は1615,3200,3716cm-1周辺に存在する。これらのコンティニュームから二量体を識別して取り出す必要がある。ACE-FTS衛星の中間赤外域の測定から北半球の亜熱帯域におけるスペクトルを取り出した。1615cm-1観測帯はHNO3のコンティニュームの不確定性が強いため、水蒸気二量体とHNO3の違いを識別することが困難である。3200cm-1は水蒸気モノマーの吸収が強く飽和しているので、他の物質の検出には使えないということが分かった。また、3200cm-1観測帯は水蒸気の影響により困難である。今後は3716cm-1にフォーカスして研究を進める。
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