2009 Fiscal Year Annual Research Report
メタゲノム及び進化工学的手法によるリグノセルロース系廃棄物の微生物分解
Project/Area Number |
08F08619
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮崎 健太郎 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 生物機能工学研究部門, 研究グループ長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BIDYUT Panjan Mohapatra 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 外国人特別研究員
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Keywords | β-グルコシダーゼ / 進化分子工学 / バイオマス / 耐熱化 / 機能改変 / スクリーニング |
Research Abstract |
リグノセルロース系廃棄物は、地球上に最も多く存在する未利用バイオマスであり、食糧とも競合しないことから、その有効利用が求められている。とくに最近ではバイオエタノール製造に関する研究が盛んであり、本研究課題についても、このような時代背景のもと、酵素的に効率分解する方法の開発を目的に行われた。 β-グルコシダーゼの由来として、高活性であることが知られている好冷菌由来の酵素を選定した。本酵素は好冷菌由来酵素に特有な高い活性を有する一方、安定性に劣るという欠点を有していた。そこで進化分子工学的手法により、本酵素を耐熱化し、活性が高くかつ安定性に優れた酵素に改変することを目指した。好冷菌酵素としてはすでに報告のあるものを用い、大腸菌での発現を考慮し、コドンを最適化した遺伝子を合成した。 実際に、本酵素遺伝子をpETベクターに連結し、大腸菌内で発現させると、低温(20-25℃)では呈色基質の分解により現れる青色コロニーの出現が確認された。だが、37℃では青変せず、高温下では活性を示さないこと、あるいはタンパク質フォールディングがうまくいかないことが判明した。このように、酵素活性の有無を寒天プレート上で簡便にアッセイできることが確認されたため、変異ライブラリーのスクリーニングを寒天培地アッセイで行うこととし、以後の進化工学的実験に移行した。 進化実験では、まず変異PCR法により遺伝子にランダム変異を誘起し、野生型では活性を示さない温度でスクリーニングすることで、耐熱化株の選抜を行うこととした。具体的には、37℃あるいはさらに高温の40℃で活性を示す変異体のスクリーニングを行った。その結果、それぞれの温度で数個ずつ、やや青色を帯びたコロニーが得られた。 耐熱化を確かめるために、大腸菌内で発現させた組み換え酵素をNi-NTAスピンカラムで簡易精製した。こうして得た酵素の安定性を調べたところ、安定性の向上というよりも、高温での発現量が増していることが示唆された。さらに変異部位を同定するために塩基配列解析を行ったところ、いくつかの変異体はオープンリーディングフレーム内に変異が認められず、疑陽性(ベクター領域に予期せぬ変異が生まれた可能性がある)であり、実際に変異を有するものは一種類のみであった。ただし、これについても同義置換であり、酵素そのものが耐熱化されたわけではないことが明らかとなった。
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