2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08F08703
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 正浩 Kyoto University, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BRUCHNER Peter 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | Fischerカルベン錯体 / クロム / 遷移金属錯体 / マレイミド / 二核錯体 / 協同作用 / π共役系 / カルボニル錯体 |
Research Abstract |
遷移金属のカルベン錯体は特異な反応性や触媒活性を有することが知られており、有機合成化学において極めて重要な化合物である。また、遷移金属の二核錯体は二つの金属中心の協同的な働きにより単核錯体では見られない物性や反応性を示すことが見いだされ、新しい機能性材料や触媒として近年の重要な研究対象となっている。そこで本研究では新規な二核遷移金属カルベン錯体の合成とその独自な反応性の開拓を目的に検討を行った。具体的な合成ターゲットとしてはマレイミドの二つのカルボニル酸素をそれぞれ遷移金属で置き換えた二核クロムカルベンデカカルボニル錯体を選んだ。これらは二つの金属中心がπ共役系で繋がっており、それぞれの電子状態が協同的に作用することでこれまでにない物性・反応性が発現することが期待される。また、光を照射することでカルボニル配位子を脱離させ、ホスフィンなど他の配位子と置換することもできる。まず、文献法に従いエチレン架橋のフィッシャー型クロムカルベンデカカルボニル二核錯体を合成した。これに対してアミンを付加させることでメトキシ基を置換し、環化を試みた。一等量のノルマルブチルアミンを作用させたところ、容易にメトキシ基が置換され、モノ置換体とビス置換体の混合物が55%収率で得られた。続いてこれらを環化させるため、種々の酸性もしくは塩基性条件下に付したところ、ほぼすべての条件で複雑な混合物を与え、錯体が壊れてしまうことがわかった。従ってこのルートで目的のビスカルベン二核錯体を合成することは困難であり、より安定な錯体のデザインもしくは新しい合成法の開発が重要であると考えられる。
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