2008 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド繊維のナノメートル・スケールでの構造形成機序
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08F08780
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 春木 Osaka University, 蛋白質研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SAVINI Gianluca 大阪大学, 蛋白質研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | βアミロイド蛋白質 / 蛋白質凝集 / 神経変性疾患 / 力学物性 / 最大応力 / らせん捻れ角 / 原子間力顕微鏡 / ナノテクノロジー |
Research Abstract |
アルツハイマー病などの神経変性疾患は、アミロイド繊維形成をもたらす蛋白質のミスフォールディングによって引き起こされており、またその繊維構造の多様性も観測されている。この研究の目的は、このアミロイド繊維の異常に大きな力学的強靭さの特徴を分子論的に理解することである。そのために、分子動力学シミュレーションによって、まず、ペプチドによるアミロイド繊維の構造と、ペプチドの側鎖や長さに依存したらせんの捻れの強さを調べる。次に、これらの構造モデルを用いて、アミロイド繊維の力学的特性を解析する。特に、様々な変形応力に対するアミロイド繊維の力学応答を調べる。 X線結晶解析によって構造決定がなされているNNQQとGNNQQYの2種類のペプチドによるアミロイド繊維のモデルについて研究を始めた。モデルとして、5本のβ構造を持つペプチドからなる2枚のβシートを構築し、分子動力学計算を行った。 2種類のペプチドによる各アミロイド繊維モデルに対して、繊維の両端に外力を加え、ペプチドの長さをモニターした。その結果、βシートが完全に並ぶまで徐々に捻れがほどけていき、その後に破壊される現象が観測された。 予備的な計算結果の解析から、最大応力として0.66GPaが得られたが、これはJ.F.SmithらによるAFM実験から得られている0.6±0.4GPaと良く一致している。本研究により、らせんの捻れがアミロイド繊維の力学的強靭さと安定性を増大させていることが示唆された。
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