2010 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド繊維のナノメートル・スケールでの構造形成機序
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08F08780
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 春木 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SAVINI Gianluca 大阪大学, 蛋白質研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | βアミロイド蛋白質 / 蛋白質凝集 / 神経変性疾患 / 力学物性 / 最大応力 / らせん捻れ角 / 原子間力顕微鏡 / ナノテクノロジー |
Research Abstract |
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患は、アミロイド繊維形成をもたらす蛋白質のミスフォールディングによって引き起こされている。アミロイド繊維は、その繊維構造の多様性を示すが分子レベルでの特徴的な構造をもち、その顕著な安定性と分解されにくい強い抵抗性を持つ。実際、アミロイド繊維は、鉄に類似した強度をもち、また構造上の類似物である絹と同様の物性を示す。この研究の目的は、この並はずれたアミロイド繊維の力学的性質について、分子レベルでの理解と整理とを行うことである。具体的には、1)GROMACSプログラムを用いて分子動力学のシミュレーション計算を実施し、そのペプチド分子の長さ、側鎖、配向等に依存したアミロイド繊維を形成するペプチドの構造形成と、ヘリックスの相対的なねじれ角について調べた。2)上記の構造モデルを用いて、異なる変形に対するアミロイド繊維の力学的特性を研究した。 アミロイドを形成する短いペプチドとしてX線回折構造が既知のNNQQおよびGNNQQYの2つに対して研究を行った。これらのモデルは、5本のβ構造を持つペプチドからなる2枚のシートからなっている。構造変形をモニターした結果、アミロイド繊維は徐々にねじれがほぐれていき、最終的にβシートが完全に並置されて破壊されており、ヘリックスのねじれがアミロイド繊維の安定性と力学的な強度に寄与していることを示唆している。自由エネルギー計算からは、単一のペプチドは繊維に比べて不安定であり、アミロイド繊維がすぐに伸長することを示している。アミロイド繊維が破壊される値として極限応力0.23-0.25GPaが得られ、圧力-歪曲線の傾きからヤング率9.18GPaが得られた。これらの値は、実験誤差内の値となっている。さらに、平均して1-10分以内に10マイクロメータの長さの繊維は自発的に破壊されることが我々の計算から示唆された。
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