2009 Fiscal Year Annual Research Report
カイコの生殖機能に関する遺伝学的・分子生物学的研究
Project/Area Number |
08F08805
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 透 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宋 研〓 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | Ng変異体 / 粘液腺 / 卵膠着物質 / 連鎖解析 / カイコゲノム |
Research Abstract |
カイコの成虫には、1組の粘液腺がある。粘液腺は、卵が散乱しないように産卵場所へ固着するために、タンパク質性の膠着物質を分泌する。しかし優性の突然変異体であるNg(Non-glue、非膠着)は、膠着物質を分泌できず、卵はバラ種となる。吉田(1998)は膠着物質のうち、ポリペプチドDZCP-2の部分アミノ酸配列を決定した。第12染色体の中央部分がこの配列をコードしていた。Ngは第12染色体21,8に占座するので、DZCP-2はNgの近傍にあると推定される。私たちは交配実験、p50T♀×p50T×d90(Ng/Ng)♂を行い、得られた個体のゲノムDNAを用いて連鎖解析を行った。その結果、DZCP-2遺伝子の両側のPCRマーカーが、Ngの表現型と完全に連鎖していた。また、DZCP-2の部分的なcDNAを用いたノーザン解析から、このRNAは7kbの1本のmRNAとして粘液腺だけで発現していた。DZCP-2のmRNA量は、p50Tとd90のいずれでも多く、RNAのサイズに関しても、2つの系統間でほとんど違いはなかった。しかし、SDS-PAGEおよび抗DZCP-2抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、250Kdのバンドの発現が確認された。このバンドはNgヘテロ個体およびホモ個体では見られなかった。以上より、Ng変異の原因は、DZCP-2の構造遺伝子の中の何らかの異常であると推測される。これらの結果について、2009年に開催された日本蚕糸学会関東支部第60回学術講演会で講演した。
|