2009 Fiscal Year Annual Research Report
テロとの戦いの時代におけるイスラム原理主義のジェンダー分析
Project/Area Number |
08F08838
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松尾 弘 Keio University, 法務研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ASLAM Maleeha 慶應義塾大学, 法務研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ジェンダー・パフォーマティビティ / ジハード / ムスリム世界 / テロリズム / イスラム急進主義 |
Research Abstract |
本研究では,ムスリムの男性がジハード(聖戦)への関心を深めている理由を探求し,そうした行動選択がJ.バトラーのいう「ジェンダー・パフォーマティビティ」(Gender Performativity:個々のジェンダーの役割に関する因襲化された公の行動)の概念に帰することができるかを確認するために,ムスリム世界における宗教的過激主義とジェンダーの動態との間の関係を分析した。2009年度は,第一に,ジェンダー・パフォーマティビティー,イスラム急進主義のジェンダー分析等に関する基本文献の徹底的な検証を行った。2009年2~3月はテロリズムに関する現在の諸政策と「ジハード」に対する公式解釈について分析し,4~7月はムスリム世界におけるジハードの現代的遂行の位置づけを考察した。8月には政治理論におけるジェンダー分析,9~10月はムスリム社会における男らしさの理想について分析を行った。第二に,こうした文献調査を踏まえて,ジェンダー・パフォーマティビティとジハードの関係を分析するためにパキスタンを中心とするフィールド・ワークを行った。サンプリング調査の準備をしたうえで,フォーカス・グループ・インタビューを実施し,その結果を記録・整理した。その成果にっき,イギリスおよびオランダにおける研究会で報告をし,討論を行った。その結果,現時点では,ムスリム世界においては宗教的熱狂が「男性らしさ」というジェンダーの理想と強い関係をもち,「暴力的男性と追従的女性」というジェンダー色の強いアイデンティティーを構築するための口実として,イスラム教が用いられる傾向が濃厚であり,テロリズムの原因としてジェンダーの役割を無視することは最早できないとの認識が深まった。
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