2008 Fiscal Year Annual Research Report
先秦時代における領域支配の展開-「郡県制」形成前夜の地方統治制度をめぐって-
Project/Area Number |
08J00037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土口 史記 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 東洋史 / 先秦 / 県制 / 領域 / 秦 / 魏 |
Research Abstract |
本年度は論文「「県」の系譜-「商鞅県制」成立の前提として-」を執筆、日本秦漢史学会に投稿した(審査中)。 従来の研究が中心課題としてきたのは先秦期における「県」制の展開であるが、春秋期についてはその特殊性解明が、戦国期についてはその軍事性の解明が、それぞれ研究の焦点となっており、両者の間を見通した研究はほぼ皆無であった。この問題に鑑み、春秋〜戦国中期までの「県」制の発展過程を明らかにした点に本論文の意義かおる。具体的な内容は次の通り。 春秋晋は西周との密接な関係を背景に、領域編成の単位として「県」を用い、そこに画一的な軍賦を課すことで、制度的均質化を伴う「県」の「制度化」が行われていた。これは同時期の楚の「県」とは一線を画すものである。この晋の「県」制は魏へと継承されたが、魏では恵王期を画期として、一円的領域の形成が極めて自覚的に志向される。これにより領域構造が変動したことを背景に「県」制はようやく中央集権的実態を有し始めた。戦国中期に至りそれが商鞅県制として秦に導入され、秦漢郡県制の直接の淵源となる。この西周→晋(魏)→秦という系譜にこそ、領域編成の単位としての「県」が郡県制的「県」へと展開してゆく過程が現れているといえる。 また本年度後半より、研究指導委託により台湾・中央研究院歴史語言研究所に訪問学員として滞在している。本所では充実した世界各国の研究書や期刊雑誌、最新のデータベースが日常的に使用でき、研究環境は極めて快適である。本所研究員の紹介により本年末に中国湖北省の博物館(湖北省博物館・荊門博物館等)を調査する機会を得たことは特に大きな収穫となった。
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