2010 Fiscal Year Annual Research Report
強力かつ選択的なプロテアソーム阻害活性を有するラクタシスチンの合成研究
Project/Area Number |
08J00070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 信裕 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 全合成 / プロテアソーム / 不斉合成 / サリノスポラミド / 多発性骨髄腫 |
Research Abstract |
ラクタシスチンは20Sプロテアソームを強力かつ選択的に阻害することが知られる天然物である。ラクタシスチンと類似の構造を有する海洋性天然物として、近年サリノスポラミドAがバハマ沖に生息する放線菌より単離された。サリノスポラミドAはラクタシスチンよりもさらに強力な20Sプロテアソーム阻害活性を有しており、その単離からわずか3年後に多発性骨髄腫の治療薬として臨床試験が開始された。また、サリノスポラミドAは小分子でありながら5つの連続する不斉中心を有するなど、極めて多官能基化された化合物であり、合成化学的にも興味深い化合物である。以上の理由から、これまでサリノスポラミドAの合成研究が多く報告されてきた。しかしながら、これまで報告されたいずれの合成も、長い工程数や、低い立体選択性といった問題を抱えている。そこで私は、より効率的なサリノスポラミドAの合成経路を確立するため研究に着手した。合成戦略としては、ビシクロ[3.3.0]骨格を利用することで、一つの不斉中心から他の4つの全ての立体化学を制御することで、合成経路の簡略化が可能であると考えた。この合成戦略に従い研究を進めた結果、私はこれまでに市販の4-ペンテン酸より14工程にてサリノスポラミドAを不斉全合成することに成功している。私の開発した合成経路は、総収率が19%であり、これまでに報告されたいずれの合成よりも高い収率にてサリノスポラミドAを得ることが可能である。また、各工程をグラムスケールにて実施することが可能であり、実際にこれまで1.5グラムのサリノスポラミドAを合成することに成功している。
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Research Products
(3 results)