2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジアイトトンボの雄の精子置換機構と雌の精子貯蔵器官の共進化に関する研究
Project/Area Number |
08J00103
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田島 裕介 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 精子競争 / 性選択 / 交尾行動 / 交尾器形態 / アジアイトトンボ |
Research Abstract |
アジアイトトンボの雌の内部生殖器の両側にある産卵板と呼ばれる板状の構造の表面には物理刺激を受け取る感覚子があり、精子貯蔵器官周辺の筋肉の動きを制御している。産卵時に卵が卵管から産卵管に向かって動いてきた刺激を感覚子が受け取ると、その刺激は神経を経由して伝達され、受精嚢の周りの筋肉が収縮し、精子は放出され、受精が行なわれる。雌には交尾嚢と受精嚢と呼ばれる2つの精子貯蔵器官があり、受精嚢は細長い受精嚢管によって交尾嚢とつながっている。雄は副生殖器の先端に鉤状の付属器をもっているが、付属器が受精嚢管より短いため、付属器は受精嚢内に届かず、精子を直接掻き出すことはできない。ところが、交尾を中断して雌を解剖すると、受精嚢内の精子は減少していたので、掻き出し以外の精子除去機構の存在が推測された。交尾中、雄の副生殖器の先端部は産卵板付近に挿入されるため、副生殖器の先端部で雌の感覚子に刺激を与え、受精嚢内の精子の放出を促している可能性がある。もしそうなら、副生殖器の幅が広く、感覚子に強い刺激を与えることのできる雄ほど、受精嚢内の精子を多く除去できるだろう。そこで、交尾中断実験を行ない、雌体内の残存精子数と副生殖器の幅との関係を調べた。すると、副生殖器の幅が広い雄ほど、受精嚢内の精子を多く除去しており、受精嚢内の精子が神経刺激による精子の放出によって除去されていることが示唆された。このような雌の受精機構を利用した精子置換は、現在までにカワトンボ科のある1種でしか見つかっておらず、今回、イトトンボ科においては新たに発見されたことにより、科の異なる種において、同じ精子置換機構を発達させていることが示唆された。また、雌の受精機構は蜻蛉目昆虫全般で類似しているため、アジアイトトンボ以外の多くの種においても、同様の精子置換機構が発見される可能性は高く、更なる発見が期待される。
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Research Products
(4 results)