2009 Fiscal Year Annual Research Report
分離派建築会の展開--「分離」の対象をめぐる1920年代日本建築界の論考分析--
Project/Area Number |
08J00126
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
天内 大樹 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分離派建築会 / バラック建築社 / 川俣正 / 磯崎新 / 藤村龍至 / 五十嵐太郎 / 「構造派」 / 八束はじめ |
Research Abstract |
本年度は収集すべき文献・資料が予想以上に増大したことに鑑み,特に研究者が居住する東京以外に保存されているものを中心に各地で資料を収集し,またその整理のための方法論に資する文献のサーヴェイに集中することとした.そのため収集作業は予定通り本年度で完了した.サーヴェイも予定通り「職業」「機能」に踏み込む,工学史・社会学的視点や東アジア全体を見据えた文献にあたることができた.そのため口頭発表の機会を次年度に譲り今年度はあえて求めず,前年度までにデータの整理を終えていた<芸術/非芸術>と「装飾」概念についての論文を発表するに留めた.前者についての論文は『美学』に既発表の和文論文を英文に書き換えたものであり,後者についての論文は前年度の国際会議における口頭発表を大幅に加筆した上で,日本語にして大正イマジュリィ学会の査読を仰いだものである. 併せて,研究者の以前の研究対象だった現代美術家・川俣正と関連づける形で,建築家・磯崎新と近年の藤村龍至を中心とするムーヴメントに言及したオンライン雑誌投稿,また2000年代の終わりを切っ掛けとしたアンケートに応じ,10年間に刊行された都市・建築史文献を中心に,都市における地形への関心を反映した文献と,都市における人々の欲望が可視化された諸側面に着目した文献に言及した出版案内,また今年度参加した表象文化論学会大会の,哲学と建築史を貫く近代からの「分離」の契機をめぐる報告などをそれぞれ行った.この10年間に刊行された建築関連のブックガイドについては,2010年3月刊行予定の五十嵐太郎編『建築・都市ブックガイド21世紀』にも,日本近代建築の重要文献,また東京の建築に反映された社会現象に関して通時的なものと近年の動きをすくい取ったものとを案内している.
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