2008 Fiscal Year Annual Research Report
室温における六方晶金属特有の新たなクリープメカニズムの解明
Project/Area Number |
08J00141
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
松永 哲也 The Graduate University for Advanced Studies, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 六方晶金属 / 室温クリープ / 転位列 / 粒界すべり |
Research Abstract |
室温クリープ中に発生する粒界すべり機構を調査するため、3種類の粒径を持った亜鉛で、クリープ試験、電子後方散乱回折法(EBSD)解析、原子間力顕微鏡(AFM)を行った。通常、粒界すべりは原子拡散によるが、室温クリープでは、見かけの活性化エネルギーが低いため、他の機構が予想される。室温クリープでは、粒内転位を粒界で吸収し、粒界をすべらせるDSC転位モデルの適用が検討される。室温クリープの粒界すべりは、粒内転位を緩和させ、クリープ変形を持続させるのに重要な役割を担っており、この機構の解明は、室温クリープのモデル化に必須である。 粒径を変化させた試料のクリープ試験から、高温での転位クリープで観察されない粒径依存性が見られ、粒径を増加させると、つまり単位体積当りの粒界量が減少すると、ひずみ量が低下した。試験後のEBSD解析からは、粒界周辺で、転位が堆積した様子が観察された。堆積した転位は、DSC転位モデル内で、粒界すべりを生み出す主要因である。しかし、DSC転位モデルの適用が可能な規則粒界が、試料内にほぼ存在しないこと、規則粒界は、<10-10>共通軸において傾角とすべり量の関係性を見ると、不規則粒界と比較してほとんどひずみを生まないこと、この角の周辺でひずみ量が落ち込むことがAFM観察と合わせて示され、粒界すべりが粒界構造に依存することを表した。 DSC転位モデルを不規則粒界に適用するとき、ジャッフリングと呼ばれる通常の拡散距離より短い原子移動が伴う。つまり拡散以下の見かけの活性化エネルギーで現象が出現する可能性を示している。これは、室温クリープの見かけの活性化エネルギーが、これまでの体拡散、転位芯拡散律速のクリープのそれより低いことを説明できるだろう。
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Research Products
(9 results)