2010 Fiscal Year Annual Research Report
知覚・概念・行為――現象学、認知的観点、プラグマティズムを利用した経験の分析
Project/Area Number |
08J00148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮原 克典 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 志向性 / 現象学 / 認知科学 / 身体性 / 拡張する心 / 社会的認知 |
Research Abstract |
私は2010年1月より2011年1月まで日本学術振興会優秀若手研究者海外派遣事業により、米国フロリダ州立セントラルフロリダ大学哲学科よおいて、Shaun Gallagher教授の指導のもと、研究活動を行った。滞在中、近年、認知科学と心の哲学の領域で大きな注目を沿びている「拡張する心」という考え方との関連において、「志向性」概念をめぐる哲学的問題の考察を進めた。認知科学や分析系の心の哲学の諸研究では、世界のなかでの心の位置づけに開して、心は「頭の中」に宿るとする「内在主義」の見方が標準的なものとして前提されることが多い。それに対して、「拡張する心」あるいは拡張主義の見方によると、認知や経験は(脳以外の)身体や環境内の事物をその物理的基盤とすることができる。現在、内在主義と拡張主義のあいだでは、認知や経験の位置をめぐって、哲学者と認知科学者を巻き込んだ活発な論争が繰り広げられているが、私の研究は、拡張主義の見方を十分に確立するためには、そこに前提される新行動主義的/道具主義的な志向性観を再考し、代わりに身体性の現象学の見方を取り人れた新ブラグマティズムの志向性観を採用する必要があるという見方を提唱した。この研究は、これまでの論争に新たな視点を導入するものだとGallagher教授からは高い評価を得ている。その研究成果は、現在、雑誌Phenomenology and the Cognitive Sciencesに投稿中(査読中)であるが、Gallagher教授からは「間違いなく掲載されるだろう」との見通しをいただいている。この研究に基づいて、Gallagher教授との共同研究も行い、そこでは身体的な新プラグマティズムの志向性観と社会的認知の理論の関連性を検討した。
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Research Products
(2 results)