2009 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀トスカーナのステンドグラス制作における芸術家間の共同作業
Project/Area Number |
08J00183
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 拓真 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 美術史学 / イタリア / ステンドグラス / ルネサンス美術 / フィレンツェ / トスカーナ |
Research Abstract |
本年度は研究計画の最終年度として、前年度までの研究を継続しその成果を公表した。前年度までに調査を行ったプラート大聖堂の作品連作に関しては、第107回イタリア言語・文化研究会例会での口頭発表を行ったほか、研究誌Annali della Scuola Normale Superiore上において論文発表をした。また、ステンドグラスの総合的研究の一環として、技法面の分析も行った。そのために、1400年前後にアントニオ・ダ・ピサによって執筆された技法書『ステンドグラス制作術』の内容の詳細な分析を行い、ステンドグラスに用いられる色彩に特に注目し、絵画などの他分野との比較を行った。その結果、ラッカ色と呼ばれていた赤紫色や、青色、赤色などの特定の色彩に関して、絵画からの影響と思われる特異な利用法が存在することを指摘した。さらに、オルサンミケーレ教会の作例を様式分析することによって、ステンドグラスの色彩利用が時代を経ることに変化する様子を指摘した。この結果は、第18回日本ガラス工芸学会研究会において口頭発表をした上で論文とし、同学会誌に「中世末からルネサンスにかけてのトスカーナのステンドグラスの色彩:アントニオ・ダ・ピサ『ステンドグラス制作術』の記述を中心として」として掲載された。 2010年2月13日から3月12日にかけてはフィレンツェに滞在し、マックス・プランク美術史研究所図書館やフィレンツェ国立古文書館などで関係資料の調査を行ったほか、フィレンツェ大聖堂のステンドグラス作品の写真撮影や、ポッローニ修復工房での作品修復の見学などを行い作品分析に活用した。また発展的な内容として、ステンドグラスと他の表現形態の関係への考察を行うべく、フィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会トルナブオーニ礼拝堂、及びフィリッポ・ストロッツィ礼拝堂においての実地調査を行った。
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