2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J00195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小原 嘉記 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国衙 / 周防国 / 重源 / 行勇 / 在庁官人 / 東大寺大勧進 |
Research Abstract |
本研究の目的は、既往の中世地方行政制度の理解を実態に即して柔軟に捉え直していくことにある。特に重点的に考察すべき点として、(1)国衙・在庁官人と幕府・守護・御家人の関係を地方支配制度の観点から見直していくこと、(2)国衙の行政能力=地方収奪機構としての変容過程を、中央用途調達制度を軸に(特に造国制や国宛)に追究すること、(3)在庁官人制の編成原理を、その物的基盤のあり方に注目して考察していくこと、の3点を課題として設定し、中世社会における公権力と支配の実相をクリアーに示すことを目指すものである。 上記の課題に対する本年度の成果・実績は以下の通り。(1)では、鎌倉初期の東大寺造営事業における鎌倉幕府の関わり方、特に材木引夫の差発形態を具体的に解明した。そこでは当初、西国縁辺地域の幕府支配(幕府による御家人動員)が守護を前提としたものではなく、幕府による系統的な地方支配の方式が採られていなかったこと(=守護未設置)、よって守護(幕府)による国衙機能の吸収というベクトルも当然視できず、鎌倉期の地方支配のあり方は根本的に再検討する必要かあることを示した。(2)では、東大寺造営料国である周防国を具体例に、造営等の進捗状況とともにその性格も変化していくことや、永代造営料所化していく筋道を示した。それは朝廷の国衙(地方収奪機構)に対する意識の変化とも大きく関わる事象である。なお鎌倉期の興福寺造営の史料収集もあわせて行った。(3)では、主に平安後期の在庁層の存在形態を明らかにする意図で、在庁層が有する任用国司号の意義を制度的観点から捉え直していく作業を進めた。その成果については近く公表予定である。
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