2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J00195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小原 嘉記 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 任用国司 / 任符 / 在庁層 / 重源 / 勧進所 / 重源系荘園 |
Research Abstract |
本年度は、(1)国衙に出仕する在庁層の存在形態に関する問題と、(2)大規模造営と造営料国を分析するための予備的考察を行った。まず、(1)では、除目・任符などの制度的アプローチによって在庁層と任用国司号の関連を整理し、その中世的展開を解明した。任用国司号は雑色任層の諸司・諸家に対する都鄙にわたる奉仕の見返りとして付与されたもので、在庁官人身分の起点に位置するものとはいえず、これにより11世紀中葉に在地領主が国衙公権を求めて結集し、共同の権力機構=在庁官人制を形成したという通説も成り立たなくなったと考える。それと同時に、在庁官人制を各時期の状況に応じて柔軟に位置付けるべきことについて、若干の見通しにも言及した。 (2)については、特に東大寺再建の要である初代東大寺大勧進重源の問題を取り上げた。具体的には重源の残した財産がどのように相承されていくのかを通じて、東大寺復興をめぐる相克を復元したものである。具体的には、大勧進は当初は重源一代限りの臨時的なポストであったこと、重源系荘園の行方に示されるように、寺家は重源の遺産を寺財として接収しようと積極的に動いていたこと、その背景には、重源の思惑とは別に、寺家は東大寺の人法繁昌が日本仏教の再生であるとする独善的な意識があり、それが東大寺復興の基調としてあったことなどを明らかにした。これらは中世前期の大規模造営と造営料国経営の問題について今後の基礎的な認識となるものである。
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