Research Abstract |
本研究の目的は中学生の援助要請行動から適応に至る過程を明らかにし,それらの実証的研究に基づいた不適応の予防的介入法を開発することであった。これまでの研究成果は以下の通りである。第1に,援助要請行動から適応に至る過程として,1.援助要請スキルの実行→2.援助の被授与(実行されたサポート)→3.援助に対する評価(援助評価)→4.学校適応,という4つの概念から構成される過程が先行研究を基に理論的に考察された。第2に,1,2,3の概念を測定する尺度が開発された。第3に,それぞれの概念と既存の適応尺度との関連,ならびに隣接する概念同士の関連が実証的に検討された。第4に,これらの過程とは別に,援助を求めることに関連する個人内変数である被援助志向性を測定する尺度(中学生版)が開発された。 これらの研究結果を踏まえ,今年度の研究では,援助要請行動から適応に至るプロセスモデルの全体的な検討を行った。具体的には,中学生に過去1ヵ月以内に悩みを相談したときの状況を想起してもらい,上記の(1)〜(4)の概念すべてを含めた質問紙調査を実施した。その結果,悩みの経験が多いこととネガティブな援助評価(「対処の混乱」と「他者への依存」)の間には正の関連があること,援助要請スキルの実行と援助の被授与の間には正の関連があること,援助の被授与とポジティブな援助評価(「問題状況の改善」と「他者からの支えの知覚」)には正の関連があること,ポジティブな援助評価は学校適応と正の関連があり,ネガティブな援助評価は学校適応と負の関連があること,が明らかになった。加えて,それぞれの概念間の関連はこれまでの研究によって得られた知見と概ね一致する結果であった。 今年度の研究により,先行研究の少ない援助要請行動から適応に至る過程が実証的に検討され,一つのモデルが提案され,適応の向上につながるための援助要請・援助提供の在り方に示唆が得られた。
|