2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J00230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三井 雄太 Kyoto University, 理学研究科・地球惑星科学専攻, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 断層摩擦 / 間隙流体圧 / 地震発生サイクル / ゆっくり地震 / Thermal pressurization / 透水係数 |
Research Abstract |
本年度は、まず静的な間隙流体圧の効果として、一般的に考えられている「脱水反応に起因する高間隙流体圧がスロースリップイベントを引き起こす」が必ずしも成り立たず、逆に相対的に低い間隙流体圧状態がスロースリップイベントの発生に繋かるケースがある、ということを数値モデル計算によって示した。従来の高間隙流体圧説が、古典的なクーロン破壊関数の考えをスリップイベントの発生に安易に敷衍してしまっているのに対し、この結果は、弾性論におけるスティッフネスと、断層面の摩擦特性から導き出されるクリティカルスティッフネスとの大小関係がスリップイベントの発生をコントロールする、という動力学的観点から見てより妥当なものてある。この成果は、査読付き国際誌Geophysical Journal Internationalに受理された。その次に、間隙流体圧の時間変化の一例として、地震性すべり時の摩擦加熱によって間隙流体圧が急増するthermal pressurizationの効果の研究に取り組んだ。この効果は、数秒程度の高速すべりのモデル計算においては調べられてきたが、数百年オーダーの地震発生サイクルのモデル計算に組み込まれた例は今まで存在しなかった。私は、試行錯誤を繰り返しながらこれに取り組み、簡単な1次元系においてはこれに成功した。その結果、Thermal pressurizationは地震時の劇的な応力降下を生み、それが地震サイクルの周期を大きく引き伸ばすこと、そしてこの効果が、ある程度以上狭い領域への変形集中を伴う場合(地質調査と調和的)断層帯中心部の透水係数に強く依存すること、をモデル計算上で示した。この成果は、国際学会を含むいくつかの学会て発表された。論文は現在投稿中てある。
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