2008 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面上及び内部領域における水素の量子力学的振る舞いの理論的研究
Project/Area Number |
08J00232
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾澤 伸樹 Osaka University, 大学院・工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 水素 / 表面 / 表面内部領域 / 量子ダイナミクス / 吸着 / 拡散 / 水素吸蔵 / 水素透過 |
Research Abstract |
今年度は表面上から表面数層程度に対応する表面内部領域における水素の量子様態を解析する第一原理量子ダイナミクス計算手法を発展させ、Pd及びPd合金表面系に対して適用させた。ここで合金表面モデルとして、Pdと合金原子M(M=Ag,Cu,Ni)を3:1で配合したPd_3Mの(111)表面を用いている。この計算手法をPd(111)適用させた結果、トンネル効果による古典的なポテンシャル障壁(574meV)より低いエネルギー準位で拡散する量子様態が見出された。ここで、トンネル過程による拡散のポテンシャル障壁は308meVである。また、トンネル効果による拡散過程によって水素原子は10^<-14>秒で拡散することがわかった。これはPd表面原子の振動周期が10^<-13>秒であるのに対し、水素原子は格子の振動より速く拡散することを示している。また、Pd_3M(111)表面における量子論的なポテンシャル障壁はPd_3Ag<Pd<Pd_3Cu<Pd_3Niとなっており、これは格子定数の大小関係Pd_3Ag>Pd>Pd_3Cu>Pd_3Niとは逆の傾向を示している。また、Pd微粒子の大きさによって水素吸蔵特性が変化するメカニズムを調べるため、格子定数を変化させながらPd(111)表面及び表面内部領域における水素原子の量子様態を解析した。その結果、格子定数が増えるに従って、吸着エネルギーが増大し、拡散過程におけるポテンシャル障壁が減少することを見出だした。これらは格子定数の増加に伴い水素-金属イオンコア間の距離が大きくなり、クーロン反発相互作用が減少するためと考えられる。また、遷移金属酸化物に対する水素の挙動を調べる第一歩として、遷移金属酸化物が特有に示す強相関効果を考慮することができるLDA+U法の有効性についても調査した。
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Research Products
(8 results)