2008 Fiscal Year Annual Research Report
キラル発光性錯体分子集合体の創製および複合物性の制御とスイッチング
Project/Area Number |
08J00259
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 素志 Osaka University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルテニウム(II)イオン / 含硫配位子 / 連結異性化 / キラリティー |
Research Abstract |
これまでに、含硫アミノ酸であるD-ペニシラミン(D-H_2pen)の配位したRuユニット[Ru^<II>(D-Hpen-O,S(bpy)_2]^+(bpy=bipyridine)が硫黄原子を介してAg^Iイオンにより連結されたRuAgRu三核錯体([Ag^I{Ru^<II>(D-Hpen-O,S)(bpy)_2}_2]^<3+>)の合成、そのジアステレオマー(Δ_DΔ_D体とΛ_DΛ_D体)の分離・単離に成功している。D-HpenはN,S、O,SおよびN,Oキレート配位が可能であるが、この錯体中ではO,S-二座でキレート配位している。 今回、この三核錯体のΔ_DΔ_D体の溶液を加熱還流することにより、三核構造とキラリティーを保持したままD-Hpenの配位様式がO,S配位からN,S配位へと変化することを見出した。一方、Λ_DΛ_D体では、同様の条件で定量的な異性化は進行しないことがわかった。さらに、RuAgRu三核錯体の誘導体であるRuAuRu三核錯体([Au^I{Ru^<II>(D-Hpen-O,S)(bpy)_2}_2]^<3+>)についても同様の加熱反応を行ったところ、Δ_DΔ_D体においてのみO,S配位からN,S配位へ異性化することが分かった。 次に、RuAgRu三核錯体にNaIを加えてAg^IイオンをAgIとして除去することによりチオラト基が酸化されたスルフィナートRu^<II>単核錯体を合成した。また、CH_3Iとの反応からチオラト基がメチル化されたスルフィドRu^<II>単核錯体も合成した。これらの単核錯体について加熱反応を行ったところ、三核錯体と同様にΔ_D体では、D-Hpenの配位様式がO,S配位からN,S配位へと変化した。一方、Λ_D体においては同条件下で定量的な異性化は進行しなかった。これらの実験から三核錯体および単核錯体の連結異性化反応はΔ_DΔ_D体(Δ_D体)においてのみ定量的に進行することがわかった。Λ_DΛ_D体(Λ_D体)についてはD-Hpenとbpy間の立体反発により、連結異性化が妨げられると考えられる。 以上の結果より、ジアステレオマー間のわずかな構造の違いにより連結異性化挙動が大きく変化するという興味深い知見が得られた。また、これらの三核錯体および単核錯体は発光性を示し、連結異性化により波長が短波長シフトすることも明らかにした。
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Research Products
(2 results)