Research Abstract |
選択的組立法は寸法のばらつきが大きい部品から高精度な組立品を得るために用いられている.まず各部品はそれぞれその寸法に応じていくつかのクラスに分けられる.そして各部品を対応するクラス同士から取り出して組み合わせることで高品質な組立品を得ることができる.この手法はピストンとシリンダーの組立など主に自動車のエンジンの組立に用いられている.近年,エンジンの高出力化に向けて,より一層,高精度な組立が求められてきており,その状況を踏まえて,本研究は選択的組立法において生じる統計学的または数学的な品質最適化問題を解明することを目的としている.重要な課題の一つとして,組み合わせる部品の寸法が従う確率分布に応じてどのようにクラス分けの基準を決定するべきか,というものがあり,各クラスが等しい幅を持つように寸法分布を分割する等幅分割法が従来より用いられている.当年度において,組立品の品質特性の目標値からのずれの2乗が損失となる状況(2乗誤差損失関数)における平均損失を最小化する分割法を様々な場合で明らかにした.さらに,損失関数をより一般化し,凸損失関数のもとでの最適分割法を求め,従来の等幅分割法と比較して大幅に平均損失を減らすことができることを示した.また,もう一つの重要な課題として,現場においては組み合わせる部品の寸法のばらつきが異なる場合が多いことがあげられる.このとき,対応するクラスに入る部品の数が異なり,余る部品が大量に出てしまうことが問題となっている.そこで当年度において,ばらつきが小さい方の部品を異なる3種類の工程平均で製造しそれらを混合することで,あえて寸法のばらつきを大きくして,もともとばらつきの大きい部品とのマッチングを良くする,という方法に着目し,部品の余りを最小化する工程平均の求め方を明らかにした.これらの成果は全て査読付きの学術雑誌に掲載済または掲載決定済である.
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