2008 Fiscal Year Annual Research Report
イラン思想史におけるナーセル・ホスロウ:クルアーン解釈学と哲学的世界観の交錯
Project/Area Number |
08J00398
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
徳原 靖浩 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際研究者交流 / イラン / ペルシア文学 / イスラーム / 聖典解釈学 / 思想史 / イスマーイール派 / シーア派 |
Research Abstract |
1.概要:本研究は、11世紀の代表的ペルシア詩人で、イスラーム・シーア派の分派イスマーイール派思想家として知られるナーセル・ホスロウ(1072年以降没)の思想を、イランの思想史的脈絡の中に位置づける試みである。本年度は、(1)先行研究で十分に論じられていない、ナーセル著作とそれ以前及び同時代のテクストとの関係を検証する作業を行なった。また、(2)新たに公刊されたペルシア語の研究書、本邦で入手が困難な一次・二次資料文献、写本情報の収集のためイランに渡航した。 2.具体的内容と成果:(1)(a)ナーセルの解釈学教理書である『宗教の顔Wajh-i Din』を邦訳し、コンピュータを用いて任意のキーワードで検索可能な状態にしたところ、タアウィール(解釈)、ザーヒル(外面)、バーティン(内面)等の解釈学に関わる語の用法が、従来の議論で考えられているよりも複雑ないし曖昧であることが判った。旧来の異端的な解釈を同時代の世俗的な公式教義に合致させることで、テクストのザーヒル/バーティンの概念に二重基準が生じたと仮定できる。(b)また、1092年執筆の異端分派学書『諸宗教解説Bayanal-adyan』において、「シーア派の第四の分派」として説明される異端的教義の記述に、『宗教の顔』の記述に酷似している部分のあることが判った。(2)イラン国立図書館にて未公刊著作の写本1点及び稀少雑誌論文数点の写しを入手した。また、ナーセル・ホスロウ研究の第一人者であるメフディー・モハッゲグ氏を往訪し、新たな研究書の刊行情報を得るとともに、テクスト読解上の不明箇所について知見を伺った。また、テヘランにおいて最新の研究書および稀少となっている一次・二次文献を数点入手した。以上の成果を踏まえ、その内容を日本オリエント学会年次大会において発表した。また、『宗教の顔』邦訳の一部を同発表のレジュメに資料として添付した。
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Research Products
(1 results)