2009 Fiscal Year Annual Research Report
走査型微小ホール素子顕微鏡を用いたエキゾチックな超伝導状態の研究
Project/Area Number |
08J00412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡崎 竜二 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 重い電子系超伝導体 / 超伝導対称性 / 下部臨界磁場 / 磁化測定 / ホール素子 / 磁場侵入長 |
Research Abstract |
第2年度目における研究では、走査型微小ホール素子顕微鏡及びアレイ状に配置した微小ホール素子を用いて、重い電子系超伝導体URu2Si2の下部臨界磁場の精密な評価を行った。ここで下部臨界磁場及びその異方性は、ノードの有無に敏感な磁場侵入長やフェルミ面の異方性を反映するパラメーターであり、超伝導発現機構と密接に関係する超伝導ギャップ構造を議論する上でその評価は極めて重要である。しかしながら、これまでこの下部臨界磁場の評価は主にバルクの磁化測定に限られており、そのような手法では渦糸のピン止めに起因する試料全体の不均一な磁化を平均して測定してしまうという問題点があり、下部臨界磁場の決定は非常に困難であった。そこで我々は、本研究で立ち上げた、走査型微小ホール素子顕微鏡や微小ホール素子アレイを使用することで試料の中心や端など各々の場所における局所磁化の測定を行い、磁束の侵入が始まる試料端における局所磁化を評価することによって下部臨界磁場の精密な決定を行った。また希釈冷凍機と測定システムとを組み合わせることで、55mKという非常に低い温度までの測定を行った。得られた下部臨界磁場の温度依存性は、従来型のフルギャップの超伝導体で予想される温度依存性とは明らかに異なっており、低温側における振る舞いから、URu2Si2がノードをもつ非従来型の超伝導体であるということを支持する結果を得た。さらに、超伝導転移より低い温度で下部臨界磁場が折れ曲がりを示すという非常に特異な振る舞いが新たに観測された。これは異常な磁束侵入が起こっている可能性を示唆しており、実験・理論両面からのさらなる研究が望まれる。これらの研究成果については学会報告を行っている。
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Research Products
(8 results)