2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物ホルモンシグナリングと細胞内レドックス制御のクロストーク
Project/Area Number |
08J00423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 絹 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シロイヌナズナ / 分子生物学 / 遺伝学 / 植物生理学 / レドックス / 遺伝子転写発現調節 / クロマチン免疫沈降 / サイトカイニン |
Research Abstract |
本研究の主要な目的は、植物ホルモンの一つであるサイトカイニンシグナル伝達の直下流で、サイトカイニン応答遺伝子群の転写制御を直接行っているARR1転写因子と、その標的遺伝子であるグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)の機能とを指標に、サイトカイニンが植物の体制を制御するのと同時に、植物細胞内で主に酸化還元状態(レドックス)のメンテナンスに関わるとされるGSTがどのような働きを果たしているのかを調べ、植物ホルモンシグナリングと、細胞内レドックス制御とのクロストークを探ることである。 平成20年度は、GSTのtDNAインサーションミュータント株を用いて、GSTによる細胞内レドックスメンテナンス不全状況が植物体に与える影響を調べた。同時に、同じくGSTのtDNAインサーションミュータント背景での、サイトカイニン応答能の度合いを調べた。具体的には、野生株と、GSTのtDNAインサーションミュータント株を用いて、様々な環境条件下(温度、培地に含まれる栄養素組成、光環境等の変動下)での表現型を調べた。その結果、野生株とGSTミュータント株とで大きな違いは認められなかった。また、サイトカイニンに対する応答性においても、表現型の上で野生株とミュータント株とで違いはなかった。 一方で、ARR1転写因子は、多種多様の標的遺伝子のそれぞれに対して、多くの推定認識配列を、各遺伝子の上流域に持っていることが分かっている。それらの、シスエレメントに対するアプローチの詳細、その標的配列と、その選択性が何に由来するのかを調べるという方向から研究を進めるために、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ手法を確立した。このChIPアッセイ手法を用いて、サイトカイニンシグナルにより活性化するARR1転写因子の、標的配列の特異性とその選択性を、細胞内環境の変化と合わせて理解することで、植物ホルモンシグナリングと、細胞内環境のメンテナンスとのクロストークについて新しい解釈に辿りつくことが期待できる。
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