2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J00461
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
並木 亮 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 量子情報処理 / 量子制御 / 冷却原子集団 / エンタングルメント / スピン・スクイージング / 最適複製 / 線形増幅器 |
Research Abstract |
光と冷却原子集団を使った量子情報処理演算の根幹となるスピンの量子非破壊測定の実験実証および応用の研究を進めた。20年度に、スピン・スクイーズド状態の生成に成功していたが、これまでの状態生成は確率的であった。本年度は、決定論的なスピン・スクイーズド状態の生成に世界で初めて成功した。この実験は、典型的な量子系の実時間制御でもあり、冷却原子系のコヒーレンスの高さと制御性の良さを改めてこの分野に示唆する極めて発展性の高い成果である。 理論に研究では、まず、(i)量子演算評価の基準の別証明を示した。新しい証明では(1)量子演算のエンタングルメントを介した量子状態への同型と(2)部分転置の非負性という量子情報理論では基本的な2つの考え方を用いる。また、この証明方法を応用し、実験で測定される忠実度の任意の集合から、量子演算の非古典性を直接検証する条件を容易に生成する方法を示した。この手法は量子演算評価に広く応用が期待できる。 さらに(ii)線形増幅器の量子限界を導いた。線形増幅器には正準交換関係から導かれる精度限界があることが広く知られおり、量子情報理論では、同様の論理でコヒーレント状態の最適複製の理論が導かれている。これらの理論は、入力信号が常に線形に変換されるという非現実的な仮定に基づいている。これに対して、現実に使われている増幅器は「適当な入力範囲で十分線形に動作する」ように設計されている。そこで、より現実的な制限を課した入力信号を想定し、テスト可能な精度限界を導いた。これにより、非現実的な線形性の仮定を排して理論的な限界と現実の技術を正当に比較できる。この結果が実験・理論双方に与える意義は非常に大きいと考える。
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Research Products
(15 results)