2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける父母の中学校選択行為の社会学的研究-社会的再生産と個人的選択-
Project/Area Number |
08J00475
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小林 純子 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 教育政策 / 教育行政 / 選択 / 行為 / 相互作用 / カルト・スコレール / 中学校 / 親 |
Research Abstract |
平成20年度の研究成果は以下の通りである。第一に、フランスにおける通学区域制度改革の社会的背景と政治的背景を明らかにすると同時に、現在実施されている通学区域の緩和措置が就学管理における地方と国家の役割に及ぼす影響を分析した。フランス国民教育省統計局でのインタビューを行ったほか、一般紙および政策綱領、関連法の分析を通じて、改革は、父母の一部による学校選択の要求と、通学区域制度にかわる公正なシステムとしての「自由選択」のレトリックを主張する政治的右派の台頭に導かれたことを指摘した。また、改革が同時に就学管理における地方と国家の権限配分のコンフリクトとしてもたち表れてくることを明らかにした。以上の成果は、学会発表(日本教育政策学会)および研究論文(日本教育政策学会年報)にまとめた。 第二に、パリ市の中学校をフィールドとし、親および校長に対するインタビュー調査を実施した。およそ60名に対するインタビューの音声データをすべて文字化し、親による子どもの就学校を決定する動機および過程に注目して分析を行った。その結果、動機によっては親の社会階層の特徴や社会的再生産が顕著にみられることもあるが、動機そのものにはほとんど影響がないことが分かった。親の社会階層による特徴は、むしろ学校を決定する過程において、情報への到達度や取捨選択のありかたに表れる。また、学校を決定する行為にとって決定的な要素は、親の社会階層のみならず、個人のもつ動機とその個人の社会的背景や経験との相互作用であることが分かった。選択を行う個人の特徴の追求を目的とした量的調査にもとづく既存研究に対し、本研究は選択が如何になされているかを課題とすることによって選択行為が社会階層によって直接決定されるのではなく、個人の経験や社会的文脈に応じて変化し得ることを明らかにできた。この成果は平成21年度中に研究論文にまとめる。
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Research Products
(2 results)