2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における流行性伝染病の伝播秩序についての地理学的研究
Project/Area Number |
08J00497
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡辺 理絵 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 流行性伝染病 / 天然痘 / 農村 / 近世日本 / 拡散現象 |
Research Abstract |
本研究は、近世日本における天然痘や麻疹などの流行性伝染病の伝播秩序について地理学的手法を用いて解明することであり、それに向けて初年度が計画にしたがい次のような調査研究を行った。 I.疾病関係資料の所蔵調査およびその資料的検討 近世期における疾病関係の資料について、主に山形県・福島県・宮城県・茨城県を中心に、広域的に渉猟した。その結果、医療従事者の記録(2件)、個人の記録(複数)を見出し、分析中である。 II.集落内・家族内での伝播過程の解明 すでに入手していた中津川郷(現山形県飯豊町)の天然痘に関する感染記録を利用し検討した。 (1)感染者を世帯単位に整理し、第1感染者と第2感染者の発病日時の時間差、第1感染者の特徴(年齢・兄弟関係など)、潜伏期間の長さについて分析した。 (2)被害状況について検討するため、罹患率や致死率について当時の人口史料より算出した。 (3)また、世帯間の感染状況について検討するため、同時期の中津川郷絵図(上杉博物館蔵)から当時の家屋の位置を復元し、寛政期の住人名との整合性について確認した。 以上の作業から、この流行における罹患者の大半は10歳以下の子どもあることが明らかとなった。未罹患者に対する天然痘の感染率は平均86%であり、致死率は平均15%であった。村落間における天然痘の伝播は、中津川郷のK村を起点として隣村へと広がっているが、村落間の伝播は最短でも1ヵ月を要し、きわめて緩慢な伝播であったことが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)