2010 Fiscal Year Annual Research Report
極低温中性原子の超狭線幅光学遷移を用いた大規模量子計算機の実現
Project/Area Number |
08J00524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 真也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レーザー冷却 / ボース・アインシュタイン凝縮 / 光格子 |
Research Abstract |
レーザー冷却による予備冷却と蒸発冷却を用いた量子縮退気体生成とを分離した実験装置を作成し、薄型のガラスセル内でイッテルビウム原子のボース・アインシュタイン凝縮の観測に成功した。さらにその量子縮退気体を光格子と呼ばれる周期ポテンシャルにローディングすることに成功した。特に三次元光格子を用いて、光格子中の原子が超流動状態からモット絶縁体状態に転移する様子を、吸収イメージング法を用いた物質波干渉の観測でもって確認することに成功した。 また、光格子に捕捉されたイッテルビウム原子のボース・アインシュタイン凝縮をイッテルビウム原子の持つ超狭線幅光学遷移を用いて分光した。特に、磁場勾配下でのゼーマンシフトを利用した磁気共鳴分光を行うことで、光の波長程度の位置分解能をもった分光に成功した。この技術は近年飛躍的な発展を遂げる、光格子を用いた固体物性のシミュレーション実験のさらなる発展への重要な技術革新といえる。 また、光格子中の各格子点の粒子占有数に応じたエネルギーシフトの測定にも成功した。光格子の同一格子点に複数の粒子が存在する場合、粒子間の相互作用によってエネルギーがシフトする。このエネルギーシフトは極低温での粒子間相互作用を特徴付けるs波散乱長と関連している。今回、イッテルビウム原子の持つ光学遷移による分光で、基底状態と電子励起状態のs波散乱長の決定に成功した。また、このs波散乱長の大きさが励起状態の磁気副準位に依存することも系統的に調べられ、基底状態と電子励起状態間の相互作用を研究する上で新しい知見を得た。さらに、この分光手法を光格子中の原子集団の超流動・モット絶縁体相転移に対しても適用し、分光的な手法を用いて定量的に相転移の振る舞いを観測することにも成功した。
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Research Products
(3 results)