2008 Fiscal Year Annual Research Report
キラルなmetallabinaphthylの創製と不斉反応への応用
Project/Area Number |
08J00558
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 一広 Kyoto University, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | metallabinaphthyl / 軸性不斉 / 水素結合 / ラセミ化 |
Research Abstract |
不斉合成研究でビナフチル骨格は極めて大きく貢献してきた。重要な不斉合成法のほとんどがビナフチル骨格を利用しているといっても過言ではなく、関連する不斉反応は現在でも最先端の合成法として報告され続けている。これらの中でも最も代表的な触媒である2,2'-ジ置換-1,1'-ビナフチル-金属錯体では中心金属(M)に配位した基質(S)と不斉軸間に4結合を隔てているにもかかわらず、極めて高選択的な不斉誘導を起こす。この基質-不斉軸間の結合数を最小にする仮想的構造を考え、この構造を2-metallabinaphthylと名付けた。本研究はこの2-metallabinaphthylの合成と利用を究極の目的とし、その前駆体として水素結合を介するキラルビナフチル化合物を選択した。この水素結合を介する軸性不斉化合物を種々合成し、軸性不斉の安定性を評価した。その結果ニトロ基のような電子吸引基を持つものが安定なことがわかった。次に同温度での溶媒効果を検討しこの軸性不斉保持への水素結合の寄与を明らかにした。電子吸引基を持たないものでは極性溶媒ほど安定性が減少した。電子吸引基を持つものでは安定性はどの溶媒でも同じであった。またこれらの化合物の活性化エントロピーを測定することにより、置換基によってラセミ化機構が2つ存在することが明らかとなった。つまり電子吸引基を持たないものでは水素結合が切れてラセミ化し、電子吸引基を持つものでは水素結合が切れないでラセミ化することがわかった。金属としてAlを導入したもののX線構造解析にも成功し、世界初の2-metallabinaphthylの合成に成功した。また金属を導入したもののラセミ化障壁は、その対応する前駆体よりも大きくなることがわかった。
|
Research Products
(3 results)