2010 Fiscal Year Annual Research Report
硬X線を用いた高感度全天サーベイによる隠された活動銀河核の探査とその構造の解明
Project/Area Number |
08J00601
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江口 智士 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 活動銀河核 / 硬X線 |
Research Abstract |
Swift/BATは15-200keVの硬X線バンドで過去最高感度の全天サーベイを行い、新しい活動銀河核(AGN)を次々に発見している。私はこれらswift/BAT AGNを日本の天文衛星「すざく」で追求観測し、光学的に非常に分厚いガスに中心核が埋もれているためにこれまで見逃されてきた「隠されたAGN」の性質および構造の解明を行ってきた。AGNのスペクトル解析には「解析的モデル」がこれまで広く使用されてきたが、このモデルでは隠されたAGNを特徴付ける「反射成分」の物理的起源は全く考慮していない。そのため、トーラスの幾何構造に正しく制限を付けることができなかった。そこで私は、3次元のドーラス構造を仮定し、トーラスにより反射されるスペクトルを数値計算で求めた結果を実際の観測データへ適用した。この数値モデルはトーラスによる反射だけでなく、降着円盤による反射も考慮しており、我々の知る限り最も物理的なモデルになっている。これを散乱成分の小さなNGC 612およびNGC 3081に適用し、前者は「AGNの統一モデル」で考えているような開口角の大きなトーラスが中心核を覆っていること、後者は開口角が非常に小さなトーラスが中心核のほとんどを覆い隠していることを明らかにした。特に、NGC 612の散乱成分が小さい原因はトーラスの幾何構造ではなく、トーラス周囲の散乱ガスの量が極端に少ないことにあることを突き止めた。これは従来の「解析的モデル」の限界を示しており、AGNの構造を理解する上で数値モデルが非常に有効であることを示した重要な成果である。
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Research Products
(1 results)