2010 Fiscal Year Annual Research Report
「心の時代」における「感情の地理学」の構築に向けた基盤的研究
Project/Area Number |
08J00611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 陽平 名古屋大学, 環境学研究科, 学振研究員PD
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Keywords | 受動喫煙 / 職場 / 地域診断 / 健康の地理学 / 保健師 |
Research Abstract |
今年度は主に以下の3点の課題に取り組んだ。1点目は、保健師による地域診断活動の実態を明らかにすることで,感情の地理学と密接に関わる健康の地理学の可能性を検討した.具体的には,中部地方A地域管内の保健所(2箇所)・市町保健センター(10箇所)の保健師を対象に地域診断実施に関する半構造化インタビュー調査を実施した結果,現状では,多くの保健師が地域診断活動に対して苦手意識を持っており,体系的・理論的レベルにおいて地域診断を十分に実施していないことが明らかになった.一方,暗黙的・経験的なレベルでは,保健師は,地域における人間関係や情報をつなぐ能力を持っていることも導出された.そのうえで,今後の保健師の地域診断への提言を示し,人間の主観性を射程に入れる健康の地理学の視点が,地域の多様な関係性を結ぶ役割を果たす保健師という専門職の再構築に繋がることを指摘した。2点目は、「受動喫煙症患者」に対するインテンシブな調査をもとに、とりわけ職場という日常空間に焦点を当てて、日本における受動喫煙と空間の問題を検討した。これにより、喫煙をめぐる人々の感情と空間の関係性を明らかにした。3点目は、日本における感情の地理学研究の更なる展開と理論化にむけて、北海道浦河町の事例を検討した。具体的には、「浦河べてるの家」という精神障碍者を主体とした施設が、従来の「理性/感情」という枠組みを超えたユニークな発想に基づいて、過疎の街の地域振興に少なからず貢献していることを展望した。
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Research Products
(4 results)