2009 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和型新規溶液反応場におけるC1、C2分子の反応素過程
Project/Area Number |
08J00648
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八坂 能郎 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イオン液体 / 水性ガスシフト反応 / 平衡定数 / 水素貯蔵 / ギ酸 / 分子動力学計算 / 回転ダイナミクス / 溶媒効果 |
Research Abstract |
新規溶液反応場としてその物理化学的性質に現在大変な興味が集まっているイオン液体について、反応およびダイナミクスの研究を当初の計画通り実施した。 (1)水素と二酸化炭素からギ酸を生成する化学平衡のイオン液体による制御 地球環境・エネルギー問題の克服にもつながるギ酸と水素および二酸化炭素の間の化学平衡に対する溶媒効果を解明した。1,3-ジプロピル-2-メチルイミダゾリウムギ酸塩なるイオン液体中で、ギ酸の脱水素反応の平衡定数を実験的に決定した。これを分子動力学計算(MD)から求まる水中における平衡定数と比較したところ、イオン液体では水に比べて数桁程度もギ酸の生成が有利になることがわかった。これは極性分子であるギ酸がイオン液体の構成イオンによってさらに強く溶媒和されて自由エネルギーが低下したためと考えることができる。このようにして、イオン液体の溶媒効果を端的に示し、他の溶媒との比較からイオン液体の溶質-溶媒相互作用の強度を定量的に示すことに成功した。 (2)MDによるイオン液体中の回転運動の長時間ダイナミクス解析 分子動力学計算によって、イオン液体と分子性液体における緩和の関数形の相違点を検討した。ほぼ同じ分子構造で電荷(相互作用の強さ)だけが異なる溶媒モデルをつくり、その中に溶かしたベンゼン分子のC-H結合の回転相関時間を10fsから10nsまでの領域で決定した。密度を固定して温度を350Kから1250Kまで変化させることで温度依存性も調べた。その結果、イオン液体に特徴的な長時間のガラス的緩和過程の温度・相互作用強度依存性を系統的・定量的に示すことに成功した。
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Research Products
(5 results)