2008 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的輻射流体力学によるブラックホール降着円盤とアウトフローの研究
Project/Area Number |
08J00649
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小泉 貴之 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙物理 |
Research Abstract |
輻射輸送方程式を直接解くことで、相対論的速度場を持つ平行平板系及び球対称系での輻射場を直接計算し、変動エディントン因子の観点から相対論的速度場での輻射場を考察した。その結果、変動エディントン因子は速度揚の上昇に伴い一旦減少することがわかった。変動エディントン因子が一旦減少することは、輻射流体の観点からすると加速される物質にかかる輻射抵抗が輻射力に比べ弱くなることに相当し、ジェットなどの加速に輻射がより有利に働くことを示す。従ってこの結果は、ジェットなどの加速現象における輻射の重要性が一層高まったことを示唆する。また、変動エディントン因子は輻射流体を数値計算で扱う際に必ず必要になるパラメータである。そこで、本研究での物理的計算結果である変動エディントン因子を簡易モデル化することにより輻射流体の数値計算により組み込み易いものにした。このモデル化は既存のものと違い強い物理的根拠を持つものである。扱いの困難さや膨大な計算量により敬遠されてきた輻射流体であるが計算機の機能向上により今後は輻射流体も精密に組み込んだ物理計算・シミュレーションが頻繁に行われることが予想される。現状の輻射流体計算でのエディントン因子の扱いは、計算可能性だけを重要視した物理的根拠の無いエディントン因子を用いられている。また、そのような計算の計算結果には物理的飛躍を含むことも問題である。これに対し、本研究の計算は物理的根拠のあるエディントン因子を与えることになった。この分野の物理研究における物理的飛躍をなくす意味でも非常に重要な計算結果である。本研究で扱った速度場のモデルは非常にシンプルなものであったが、ブラックホール降着円盤からのジェットや超新星爆発現象などにおける物質の輻射による加速などを扱う際に、0次標準モデルの結果として得られたエディントン因子パラメータとして非常に重要な意味を持つと言える。
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