2008 Fiscal Year Annual Research Report
複雑系の概念を用いた地盤-杭-上部構造物系の地震時挙動の推定
Project/Area Number |
08J00660
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
肥田 剛典 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | カオス時系列解析 / 時間遅れ座標系 / アトラクタ / RC杭 / 破壊 / 健全性評価 |
Research Abstract |
複雑系の概念に基づくカオス時系列解析は、システムの過去の挙動から、その後の挙動を推定することを目的とした時系列解析手法である。この手法は、時系列データを時間遅れ座標系に埋め込んで再構成された「アトラクタ」と呼ばれる多様体に、システムの挙動の特性が位相構造として保存されるという原理に基づくものである。これから、ある時系列データのアトラクタを再構成することで、システムの挙動の特徴を抽出することが出来ると考えられる。 地震時に破壊した杭は、健全な杭と異なる挙動を示すと考えられる。これから、杭破壊前後の時系列データのアトラクタを比較することで、挙動の特性の変化を検出できる可能性があると考えられる。そこで、(旧)科学技術庁防災科学技術研究所の水平1次元大型振動台を用いて行われたRC杭基礎の破壊実験において、カオス時系列解析を用いた杭の損傷の検出可能性を検討した。実験では、前震、本震および余震を想定した加振が行われた。木震で地盤が液状化し、RC杭が破壊した。本研究では、杭破壊前後の系の挙動を比較するため、前震と余震の杭の加速度データに対し、カオス時系列解析を適用した。カオス時系列解析では、時系列データを時間遅れ座標系に埋め込む。この座標系の次元を埋め込み次元と呼ぶ。埋め込み次元はシステムの決定論的性質の指標と考えることができる。アトラクタの埋め込み次元を推定したところ、余震の埋め込み次元は、前震のそれより高くなった。これは、杭が破壊したことで、杭の挙動の決定論的性質が低下したことを示唆している。これから、杭の加速度の埋め込み次元を比較することで、杭の損傷を検出できる可能性があることが分かった。
|
Research Products
(6 results)