2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメーター空間配置制御による軸系ダイニンの協働性の創出
Project/Area Number |
08J00663
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
鳥羽 栞 National Institute of Information and Communications Technology, 未来ICT研究センターバイオICTグループ, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鞭毛 / 軸糸 / ダイニン / モータータンパク質 / 微小管 |
Research Abstract |
真核細胞の鞭毛の浪打ち運動は規則的に配置したダイニン分子の時間的・空間的の協働性によって行われているが、その波形形成機構はまだわかっていない。鞭毛運動の理解のためには、この協働性発現の仕組みを探ることが必須の課題である。本研究ではナノメートルレベルで人工的に規則的にダイニンを配置し、ダイニンという素子の協働性が発現する条件を探ることを目的とした。本年度はX線回折像から鞭毛内のダイニンの配置と構造変化の解析と協働性素子として配置するためのダイニン分子の機能の詳細な測定を行った。 まず鞭毛内のダイニンの配置を調べるために、高輝度放射光施設SPring-8にて軸糸のX線回折像を得た。精製軸糸を流動配向させる系を用いて、野生株とさまざまな軸糸構成要素欠損株との回折像の比較から、ダイニンを含む軸糸構成要素の回折像の反射への寄与を同定できた。さらに、カルシウムイオンを添加した軸糸と添加しない軸糸の回折像の比較を行い、外腕ダイニン由来の反射とラジアルスポーク由来の反射がカルシウムの有無によりその構造周期を変えていることを初めて明らかにした。 次に、鞭毛運動の制御機構にかかわるダイニンfに着目し、その二つのモーターユニットαとβそれぞれの生化学的特性を調べた。2つのユニットは異なる酵素活性や微小管滑り運動能を持ち、さらにそれぞれのユニットが異なるメカニズムで外腕ダイニンの活性を制御しているという新たな機能が示唆された。さらにダイニンfの運動の単一分子レベルでの詳細な測定を行った。レーザー光を用いた光計測技術により、状況に応じて運動の方向や速度を変えるというダイニン分子の特徴的な運動を捉えた。 本研究は鞭毛運動発生機構の理解の基礎を提供するものであり、また、ダイニンの動作機構の解明にも大きく貢献することが期待される。将来、これらのデータを基にバイオナノマシンが完成すれば、ナノテクノロジー分野において幅広い応用が考えられる。
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Research Products
(13 results)