2008 Fiscal Year Annual Research Report
フッサールを中心とした現象学的倫理学および社会理論の研究
Project/Area Number |
08J00709
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八重樫 徹 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 現象学 / フッサール / 倫理学 / 行為 / 生活世界 |
Research Abstract |
作年度までは、因果性と動機づけ、理性と責任といったキーワードに注目しつつ、フッサールを中心とした初期現象学における倫理学と行為論の研究をおこなってきた。今年度も引き続き、同様のテーマで研究を続行した。特に、行為における因果性と動機づけの問題に関する理解を深めるため、現代英語圏の行為論や心の哲学の様々な文献を読み、現象学の伝統における当該テーマに関する議論と対比させる作業をおこなった。また、新たに刊行されたフッサール全集第39巻『生活世界(Die Lebenswelt)』には、後期フッサールの実践哲学に関する重要なテクストが含まれているため、これを重点的に研究した。その成果をふまえて、行為に関するフッサールの考えの変化を初期から後期まで跡付ける作業を進めた。 2008年9月からは研究指導委託によりドイツ・ケルン大学に客員研究員として滞在し、同大学のフッサール文庫(Husserl-Archiv)で、ディーター・ローマー(Dieter Lohmar)教授の指導のもと調査・研究をおこなった。同文庫では、意志と行為に関する重要な洞察を含む未公刊の草稿群『意識構造の研究(Studien zur Struktur des Bewusstseins)』をはじめとして、行為論や倫理学に関する多くの重要なテクストを閲覧することができた。これらのテクストをも利用しながら、フッサールの行為論の全体像を描く作業を現在も継続中である。なお、2009年4月には、フィンランド・タンペレで開かれる北欧現象学会(Nordic Society for Phenomenology)年次大会でフッサールの作用概念の変遷に関する研究発表を英語で行う予定である。
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