Research Abstract |
犯罪不安は,自分が被害に遭う不安を扱う概念として用いられてきた。しかし,日本では社会に対する安心感や信頼感が揺らいでいることが問題であることが指摘されている。そこで,犯罪被害に対する認知・感情反応を総合的に捉えるために,測定の水準として社会的水準と個人的水準,測定の種類としてリスク認知と不安感情とを想定し,大学生,子どもを持つ母親を対象として調査を実施してきた。その結果,犯罪被害に対する認知・感情反応を4側面から捉える事が妥当であること,大学生では個人的不安が防犯対策を促進し,母親では社会的水準の認知や感情が防犯対策に影響を及ぼしていることが示された。一方,犯罪被害に対する認知・感情を促進する要因として,犯罪情報の影響力について検討を行ってきた。 本年度は,特に犯罪情報が犯罪被害に対する認知・感情に与える影響についてより詳細な検討を行った。具体的には,従来の研究のようにメディアなどの犯罪情報への接触頻度のみを測定するのではなく,どのような報道内容に注目することが,そして視聴内容に対して何を考え,感じることが,犯罪被害に対する認知・感情に影響を及ぼしているのかに関して検討を行った。大学生を対象とした調査の結果,特に「事件の顛末」や「犯罪内容」に注目することが,視聴内容に対する反応を介して,犯罪被害に対する認知・感情に影響を及ぼすことが明らかとなった。また,視聴内容に対する反応に関しては,「ネガティブ感情」,「反復性認知」,「知的関心」,「積極的拒否」,「身近さ認知」に大別されること,その中でも特に「反復性認知」と「身近さ認知」の影響力が大きいことが示された。また,概して犯罪被害に対する認知・感情反応と防犯対策の関連は小さいことが示された。
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