2008 Fiscal Year Annual Research Report
微生物が産生するメンブランベシクルの生産機構及びバイオフィルム中での機能の解明
Project/Area Number |
08J00741
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田代 陽介 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Membrane vesicles / 緑膿菌 / Pseudomonas aeruginosa / Pseudomonas quinolone signal / Quorum sensing / バイオフィルム / アルギン酸 / 外膜タンパク |
Research Abstract |
多くの病原性細菌は毒性を内包する膜小胞"Membrane vesicles(MV)"を細胞外に放出する。MVは宿主や異種微生物へ病原因子を運搬する機能を有することから、細菌感染を制御するためにはMVの生産機構を解明することが重要である。本研究では日和見感染菌として知られる緑膿菌をモデル微生物として用いた。 これまでの研究により、外膜タンパクのフォールディングに関与するOmp85ホモログの欠損株ではMVの過剰生産を確認している。このことから、ミスフォールディングな外膜タンパクがMV生産に関与していると作業仮説を立てた。実際に、ペリプラズムに局在する数種プロテアーゼはMV生産抑制因子として働いていることを明らかにし、ミスフォールディングな外膜タンパクによるMV生産制御を実験的に示した。また、ミスフォールディングな外膜タンパクはバイオフィルム構成成分であるアルギン酸合成にも働いていることが知られているが、アルギン酸合成制御因子もMV生産調節因子であることを示し、新規なMV生産経路を提唱した。 また、緑膿菌においてMV生産を促進するQuorum sensingのシグナル物質としてPseudomonas quinolone signal(PQS)が知られているが、PQSは異種細菌に対しても形質変化を起こすことを見いだした。モデル微生物として大腸菌を用い、PQSが鉄利用の制御、MV生産の誘発、運動性の抑制といった効果を有することが分かった。また、更なる詳細な解析によって、PQSによるMV生産誘発はリポ多糖の荷電変化によるものであることを示した。さらに、この現象は他の異種細菌に対しても普遍的に起こることを示した。 以上の結果は細菌におけるMV生産機構解明に繋がる知見となった。
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