2009 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性のない強相関電子系超伝導体に関する理論的研究
Project/Area Number |
08J00753
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
多田 靖啓 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超伝導 / 空間反転対称性 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
平成21度は主に、擬2次元酸化物超伝導体Sr2RuO4の(001)界面における超伝導、空間反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi3,CeIrSi3の諸性質、さらに強磁性超伝導体UCoGeにおける上部臨界磁場に関して理論的研究を行った。まず、Sr2RuO4の(001)界面に関しては、界面近傍における空間反転対称性と超伝導対称性の関係を調べ、近年盛んに研究が行われているトポロジカル超伝導状態の実現可能性について議論した。次に、CeRhSi3,CeIrSi3に関して、常伝導状態での電気抵抗、スピン揺らぎの磁場依存性、超伝導対称性に対するスピン反転散乱の効果、縦・横両方向での上部臨界磁場Hc2などについて、ミクロスコピックな立場から理論的に解析した。実験で観測されているこれらの物質における諸物性が、空間反転対称性の欠如と量子臨界点近傍の反強磁性スピン揺らぎによって理解できることを示した。とくにHc2に関しては、新たに導出したHc2の一般的な計算式を用いて、これら二つの性質のinterplayが重要となることを指摘し、量子臨界点近傍の超伝導体のユニバーサルな性質の一側面を明らかにした。さらに、この結果を踏まえて、強磁性超伝導体UCoGeにおけるHc2の異常な振る舞いについて解析を行った。この物質におけるHc2の振る舞いを理解するためには、超伝導ギャップ関数の対称性だけでなく、強磁性スピン揺らぎの磁場依存性が重要であることを指摘した。また、そこにおける「帯磁率の非解析性」の効果についても解析を行った。現在、より現実の実験の状況に則した解析を進めている。
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