2008 Fiscal Year Annual Research Report
スパイク生成時刻の予測に基づく新しい神経細胞のモデルの構築
Project/Area Number |
08J00760
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 亮太 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経細胞 / スパイク / 予測 / 積分発火モデル / 電気生理学実験 / イオンチャネル / 時系列解析 / brain simulation |
Research Abstract |
神経細胞の入力(電流)と出力(スパイク)の関係を理解することは生物の情報処理機構を理解するうえで重要であるだけでなく、人工知能やBrain Machine Interfaceの実装など工学的な応用上も重要である。近年、神経細胞はおどろくほど「正確に」入力信号をスパイクに変換する素子であること、すなわち神経細胞は決定論的に入力からスパイクを生成することが示された。神経細胞はどのような機構でスパイクを生成するのだろうか? この疑問に答えるために、我々は、神経細胞の生成するスパイク時刻を入力電流のみから正確に予測できる数理モデルを構築した。まず、生理学分野の標準的モデルであるホジキンハクスレーモデルと理論神経科学で広く用いられている積分発火モデルを用いてスパイク時刻の予測を行った。しかし、これらのモデルでは神経細胞のスパイクの50-60%程度しか予測できなかった。我々は、積分発火モデルの定数閾値を時間変動閾値に拡張したモデルを構築し、神経細胞のスパイク時刻の予測を行った。我々のモデルは多様な神経細胞の生成するスパイクの90%程度を正確に予測することに成功した。さらに、閾値変動のダイナミクスの違いによって神経細胞のスパイク生成機構の多様性を説明できることが示された。 我々の結果は神経細胞の多様なスパイク生成機構を解明した点で重要であるだけでなく、神経回路の計算機シミュレーションを行う上で重要なツールとなる。計算機シミュレーションは記憶、学習、脳の病気等のメカニズムを解明する重要な方法の1つである。先行研究には1)シミュレーションに莫大な計算量が必要となり、2)神経回路を構成する神経細胞の多様性を考慮に入れていないという問題点があった。我々の構築したモデルにより多様な神経細胞から構成される神経回路の高速かつ忠実なシミュレーションが可能になる。
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Research Products
(8 results)