2009 Fiscal Year Annual Research Report
高精度台風予報モデルの開発による災害予報の精度向上及び将来の被災評価
Project/Area Number |
08J00776
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 佳明 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 熱帯低気圧 / 地球温暖化 / 大気海洋相互作用 |
Research Abstract |
温暖化時の熱帯低気圧の実験初期値作成法として、三次元変分法的データ同化法(3DVAR : Three Dimensional VARiational Data Assimilation)3DVARを利用した、以下に示す初期値化手法を構築した。まず計算初期場の指定した位置に、人工的に熱帯低気圧の海面気圧の情報(ボーガスデータ)を埋め込む。このボーガスデータを偽の観測データとして、傾度風平衡を制約としながら、背景場とボーガスデータ双方に対して物理的に矛盾のない場を算出する。この手法を用いることで、熱帯低気圧の初期強度・大きさ・位置を自由に決定できるようになり、未来気候時の初期摂動(熱帯低気圧の強度・位置の異なる実験を行い被害が最も顕著なケースを抽出する)作成することが可能となった(Miyamoto and Xue 2009)。 一方、波浪境界層(WBL)モデルの構築のため、WBLモデルの主要部となる海飛沫(SeaSpray)の振舞をモデル化した。基礎物理過程である、強風下(特に風速30m/s以上)でのSeaSprayの生成関数の風速依存性が分かっていないため、肝心の熱帯低気圧下では、モデルの精度が格段に悪化することが示された。 上記のSea Sprayの影響を加味したWBLモデルの問題点を解決するため、熱帯低気圧に対する海洋の応答に詳しいIsaac Ginis教授と、WBLモデルを構築したTetsu Hara教授から助言をいただいた。彼らの意見は、WBLモデルのコーディングの難易度を踏まえると、現段階ではWBLモデルを構築するのではなく、まず単純な結合モデルを構築し、その中の大気・波浪モデル内の海面交換係数を書き換える方が良いというものであった。言い換えれば、現在得られている知見で構築されるWBLモデルの精度では、単に海面交換係数を最新の観測結果に則った分布(強風下で抵抗係数が頭打ちになる)にするだけでも同程度の精度となるということである。そこで、大気・波浪・海洋結合モデルを構築し、運動量に対する海面交換係数を室内実験で得られた強風下で一定値化する分布、エンタルピーに対する交換係数を観測で得られた分布に書き換えた。
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Research Products
(6 results)