2008 Fiscal Year Annual Research Report
大環状π共役系分子二量体を有する光合成モデルの構築と光ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
08J00808
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高井 淳朗 Osaka University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポルフィリン / ダイマー / ラジカルカチオン / 光合成 / 電子移動 / π-π相互作用 |
Research Abstract |
光合成初期課程ではエネルギー移動や電子移動反応を組み合わせることで、光エネルギーを化学エネルギーへと効率よく変換している。これら一連のプロセスの解明は、生化学的な重要性だけではなく、優れた人工光合成モデルの構築という点からも非常に重要な課題である。しかし、それら各プロセスの分子レベルでの解明や相補的な理解は不十分である。本研究では、エネルギー移動プロセスの終点であり、電子移動プロセスの始点である光合成反応中心の"スペシャルペア"と呼ばれるバクテリオクロロフィルダイマー(二量体)に着目し、スペシャルペア機能モデルとしてのポルフィリン二量体の電子移動特性および光ダイナミクスの解明を行った。電気化学測定や可視・近赤外吸収スペクトルなどの結果から、ポルフィリン二量体を一電子移動酸化すると、ポルフィリン間距離が近いほど、そのπ-π相互作用が大きくなることがわかった。さらにナノ秒時間分解分光法の結果から、ポルフィリン二量体三重項からアクセプター(キノン・ニトロベンゼン誘導体)への光誘起電子移動は、対応するポルフィリン単量体と比較して顕著に加速されることがわかった。また逆電子移動反応については、単量体よりも減速されることがわかった。得られた光電子移動速度を電子移動理論に従って解析した結果、ポルフィリン二量体のポルフィリン間π-π相互作用によって、再配列エネルギーが減少し、また光誘起電子移動反応のドライビングフォースが増大することを、初めて定量的に明らかにした。これはスペシャルペアに見られる二量体構造が、光合成反応中心において高効率で電荷分離状態を得るために重要な役割を果たしていることを示唆する、意義深い結果である。以上の研究成果は国内外の学会(ICPP-5や阪大フォーラム2008など)、および学術雑誌(Chem.-Eur.J.)で発表した。
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Research Products
(4 results)