2008 Fiscal Year Annual Research Report
鉱物中のヒドロニウムイオンの定量法の確立と地質温度計としての利用
Project/Area Number |
08J00832
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 直哉 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒドロニウムイオン / カバンシ石 / ペンタゴン石 / 含水鉱物 / NMR |
Research Abstract |
カバンシ石とペンタゴン石という多形関係の鉱物に対して研究を行った。それらの化学組成[Ca(VO)Si_4O_<10>・4H_2O]において、両鉱物の違いは4H_2Oの部分がカバンシ石は(H_2O)_<4-2x>(H_3O)_x(OH)_x、ペンタゴン石は4H_2Oという違いがあることを解明した。さらにこの違いは、生成温度が300℃以上か未満かを示唆する可能性を提示した。以上のことから、化学式にnH_2Oを含む鉱物は、(H_2O)_<n-2x>(H_3O)_n(OH)_nの化学式に相当する水の構造状態に多様性があるという含水鉱物への一般論へと導いた。 カバンシ石とペンタゴン石に続く研究として、カバンシ石と構造が類似した魚眼石の研究を行った。カバンシ石にH3O+が含まれることから、魚眼石にもH3O+が含まれる可能性を検証するため、6産地7試料の母岩が異なる試料を分析した。魚眼石の基本的な記載を次の方法で行った。まず化学組成をEPMAで測定し、含水状態を調べるために顕微ラマン分光を実施し、熱的性質を調べるためにTG-DTAを実施した。次に、これまでの魚眼石に対する研究ではなされていないNMRを実施した。その結果、7試料中2試料で、NMRスペクトルにおいて、約-1ppmのケミカルシフトが存在する明確な違いが認められた。この2試料は、インド産の試料でカバンシ石が産出する場所と同一である。これらのことから、この-1ppmのケミカルシフトがH3O+に関係すると推測できるが、その外に、魚眼石に含まれるフッ素と水素が結合しているのではないかという可能性も考えられる。魚眼石におけるフッ素と水素の結合はPrince(1971)以来、指摘されてきたが、未だ明らかにされていない問題である。この-1ppmのケミカルシフトの解釈が今後の課題である。
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Research Products
(1 results)